道路から土間を入って坪庭、奥に広い庭があり、坪庭には直射日光があたらず、光さす奥の庭との間に温度差がおきて自然対流がおきる。この吉田邸では、以前スペースの問題からこの坪庭を潰して部屋にしたら、風が通らなくなってしまい、もう一度坪庭にもどしたと説明を聞いた。風通しのだけではなく、直射日光のあたらないボワァとした光は不思議とこの小さなスペースを魅力的にみせる。そして光だけではなく、ここには配置や造形のなかにミクロコスモス的世界観があらわれている。
そこには、世界の構成物としての「地(砂利)、水(つくばい)、火(灯籠)、風、光」があり、一種ギリシャ哲学の世界のとらえ方と似ている。ユング派の箱庭療法との類似も感じる。坪庭という庭には民族のもっている世界観が凝縮して表れているのではないか。(画像は京都の町屋「吉田邸・無名舎」)